古海洋バイオシステム研究分野
生きている地球の歴史と未来

 生命は海に生まれました。海の存在が地球の生命にとって必要不可欠でした。

 水の惑星・地球の海が作った穏やかな気候環境が固有の生命を36億年間育んできました。

 生命史の36億年は進化と絶滅の歴史であり,何度か地球生命の危機(大量絶滅)が知られます。

 地震,火山活動だけでなく,変動する大地・海水準,深海底の堆積物が大地を構成する(海からやってきた大地)など,地球表層を構成する地殻もその歴史は多様であることが分かってきました。

 地球生命の研究は,このような生命自身とそれを取り巻く環境やその変化を理解することが重要です。

 房総半島は,世界に類を見ないほど複雑なプレート収束境界(3つのプレートが境を接する)に位置します。特に,その南部は水深3000mから1000mの深海底で堆積した堆積物が半島を構成し,世界的にみても地殻の変動量が大きい地域です。

 そこでのプレート運動は,地殻の変動を決定し,元禄・大正時代などに起こった大規模な地震と密接に関係しています。

 また房総半島は,2000万年前から3000年前までの地層が露出し,これらの地層に豊富な化石や多数の火山灰層が含まれ,海洋生物のたどってきた変遷および古海洋環境の変遷が明らかにでき,古生態学,進化古生物学,伊豆半島・伊豆諸島の火山活動史などの研究に適した地域です。

 そのような房総半島南部にある当研究センターでは,1999年度から現海洋バイオシステム研究分野に加え,古海洋バイオシステム研究分野を新設し,地球科学的観点から古海洋生物群集に関する研究やその生物群集とそれを取り巻く海洋環境に影響を与えたと思われるさまざまな地球科学的変動の研究を行っています。





「注」 この画像では,その中心に見えるはずの関東地震の記録が解像度の関係ではっきり見えない。
地震,地殻変動(隆起),津波」の項でその詳細を見ることができる。


高解像度の画像は こちら。(160KB)


「最近の海面変動」

 地球の温暖化が叫ばれて久しい。

 人類が生活のために排出してきた二酸化炭素は,地球の温暖化につながると言われています。人類は,石炭,石油という化石燃料を大量に消費してきました。排出された二酸化炭素は陸上植物,海洋およびそこに棲む植物に取り込まれて,減少します。しかし人類は,森林の伐採などによって,二酸化炭素を減らす機会を奪ってきました。

 地球の温暖化によって,南極などにある氷河が融けて,海水面が上昇することが懸念されています。

 およそ5500年前(縄文時代)に地球には温暖な時期がありました。その時、海は現在の海岸線よりも内陸に入り込んでいました。よく知られて縄文時代の遺跡・貝塚が現在の海岸線よりも内陸にあるのは,昔(5000年前)の海岸線にあると理解すると不自然ではありません。

 上の写真の薄緑色に見える地域は,5500年前には海となった地域であす。その地域が現在の我々の生活にとって極めて重要な地域であることは間違いありません。

 人類が排出してきた二酸化炭素が地球の温暖化の原因であるならば,それを減らすことを考えなくては人類に未来はありません。


「地震,地殻変動(隆起),津波」

 画像は,1923(大正12)年9月1日11時58分,東京本郷の東京帝国大学地震学教室で記録された関東地震の地震計の記録です。三浦半島西方の相模湾海底を震源とし,マグニチュードは7.9でした。相模湾北岸・房総半島南部での木造住家全潰率は30%を越え,現在の震度にすれば7に相当するそうです。記憶に新しい阪神神戸地震よりも大規模な地震であったのです。地震計の記録は,震災予防調査会(1925)から引用しました。

関東地震
高解像度の画像は
こちら。(86KB)


 地震に伴って津浪が発生して海岸線をおそっています。
 その地震は地殻変動を伴って,特に南房総は地震による地殻隆起が大変大きい地域として有名です。


地震の隆起量

「火山灰,時代,起源」

 写真は千葉県市原市大久保に分布している地層中に含まれていた火山灰を構成する火山ガラスの顕微鏡写真です。上総層群国本層という地層の最下部に見られるこの火山灰はKu6Cと呼ばれ(地層や火山灰に名前を付けています),九州地方では今市火砕流堆積物,近畿地方では大阪層群のアズキ火山灰と呼ばれていますが,それらは同一の火山の噴火に起源による広域火山灰であることが分かりました。時代は前期更新世末期といって今からおよそ80万年前に,九州の九重火山北方の猪牟田カルデラから噴出したもので,遠く房総半島まで約900km飛んできたものです。



火山灰

「海洋バイオシステム研究センター周辺の地層」

 当研究センターの周辺の海岸に分布する地層の写真です。写真の白色に見える部分は 火山灰層 で,写真の灰色の部分は泥炭や砂岩などからなります。天津層中部の小湊凝灰岩部層と呼ばれる地層です。今からおよそ1500万年前の深海底に堆積した地層です。



天津層

「地層の時代を決定しする化石,ナノプランクトン」

 光学顕微鏡写真と図は,大きさ数ミクロン(1000分の数ミリ)の石灰質殻からなる石灰質ナノプランクトンと呼ばれるものです。単細胞である浮遊性鞭毛藻類(植物)のコッコリトフォアの細胞表面に鱗のように付着した石灰質殻(コッコリス)が化石となった石灰質ナノ化石です。この化石は世界中の海成層の石灰質の堆積物の主要構成物で,ジュラ紀以後多くの種が出現し,絶滅してきました。この仲間の多くの種は短い生存期間を持つために時代決定に有効な化石(示準化石)となります。図は1,800万年前以降に生存した石灰質ナノ化石とその生存期間(縦線)を示しています。縦線の両端が種の出現と絶滅を示す化石基準面と呼ばれ,氾世界的な同時性が知られ,地質時代を区分する「時間目盛り」の役割を果たします。つまりこの化石を調べれば地層の地質年代がわかります。

石灰質ナノ化石

 このような化石生物を用いて房総半島の地層の年代(地質年代)が決定されてきた。
 その房総半島の地質年代は,地球の年齢(46億歳)に比べると極めて若い年代(年齢)である。


地質年代

「深海底の謎の生物たち」

 深海底には太陽光がとどきません。地球表面に生きているいろいろな生き物は,太陽の光エネルギーを利用して生きています。20年前に深海底の熱水噴出孔周辺に未知の生物がいることが判りました。熱水に溶けている硫黄とそれを摂取する細菌(バクテリア)が,それぞれ地表での光エネルギーと植物に相当し,それらが熱水噴出孔周辺の生態系を維持しています。そんな特異な環境に未知の動物がいることだけでなく,それらが非常に原始的であることに注目を集めています。

 写真は琉球列島西方の海底火山の熱水噴出域に見つかった原始的なフジツボ類のミョウガガイ科の新種で,約2億年前の中生代に近縁な化石が見つかっています。熱水噴出孔にはフジツボ類の全4亜目に現存する最も原始的な分類群が生きていて,数千万年以前の様子をタイムカプセルで見ていることに相当します。

フジツボ

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