氷河


氷河とは,読んで字のごとく氷の河のことをいいますが,イギリスのスコット極地研究所の定義によれば,「絶えず高所から低所へ動く雪と氷の集塊」のことをいいます.日本には残念ながら氷河は存在しないので,なかなか我々にはなじみがありません.ただテレビ番組や,アラスカやヨーロッパなどの観光旅行などで誰でも一度は目にしたことはあるとおもいます.きっとその氷河は,透き通るような青い氷であったとおもいます.氷河の色の美しさと迫力には,必ず誰もが心を奪われます.

近年,地球温暖化現象がさわがれるとともに氷河も世界中の注目を浴びるようになりました.地球温暖化によって氷河がどんどん解けているのではないかと考えられるからです.たしかに,現在世界各地で氷河の縮小がおこっています.氷河が解けると我々の生活にどんな影響があるでしょうか.海面の上昇や,氷河周辺での水資源の変化,氷河湖決壊の危険などがよくいわれます.いま氷河がどうなっているのか,これから氷河はどうなっていくのか,これらは氷河研究者の現在の大きな課題です.

氷河には,さらに大切な側面がいろいろあります.たとえば,氷河には毎年降る雪が解けずに残るので,氷河の内部には過去数百から数十万年前に降った雪が残されています.この氷を掘り出していろいろな分析をすると,昔は寒かったとか暑かったとか地球環境の歴史を知ることができるのです.氷河の内部の氷は普通,円柱上のドリルをつかって掘り出します.掘り出した氷のことをアイスコアと呼びます.氷河は,地球の過去を知る上でも大切なものなのです.また,氷河や海氷などの雪や氷の部分を雪氷圏とよびますが,雪氷圏は色が白いので太陽の光を宇宙へ反射するという性質をもっています.これは雪氷圏の面積の大小が,地球が受け取る太陽の熱を調節する役割があるということです.氷河の変動は,地球全体の気候を考える上でも大切なのです.

我々の研究室では,この氷河にすむ変わった生物の研究をしています.彼らのことを雪氷生物とよんでいます.当然氷河の上は氷点前後のとても寒いところです.そんなところで生きている生物など普通は考えられませんから,この雪氷生物のことは,最近までほとんどしられていませんでした.しかし,彼らの研究をすると我々がいままで想像もつかなかったようなことが,いろいろわかってきました.

雪氷生物のことを理解するには,かれらのすむ氷河とはいったいどんなところなのか?いまどんな変化がおこっているのか?ということをしっかりと理解しなくてはいけません.そのために,我々は氷河研究者とつねに共同研究をおこなっています.


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